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表1  THIの12尺度と判別値:その内容・意味、および2種類の正常集団
すなわち勤労者男女集団*と地域中年住民集団**での、尺度得点・判別値・β係数の平均値と標準偏差

一次・二次尺度
略 号
記号
質 問
項目数
内 容・意 味
平均尺度得点と標準偏差(下段)
男*
女*
男**
女**
1.多愁訴

SUSY
(I)

20
手足や体がだるい、横になりたい、頭が重い、痛い、ぼんやりする、体が痛い、熱っぽい、などの不定愁訴
28.84
6.00
31.38
6.31
28.62
6.72

29.84
6.59

2.呼吸器

RESP
A

10

たんがからむ、鼻水が出る、せき、くしゃみでる、のどが痛む、など

14.87
3.50

14.07
3.10

14.46
3.70

13.63
3.29

3目と皮膚

EYSK
B

10

皮膚が弱い・かゆい、発疹・じんましんが出る、目があつい、痛い、充血するなど

14.53
3.25

16.36
3.54

13.77
3.25

13.94
3.13

4.口腔と肛門
 =口とおしり

MOUT
D

10

舌があれる、口が熱っぽい、歯ぐきの色がわるい、出血する、口臭がある、排便痛、痔、便秘など

13.22
2.64

13.31
2.57

13.03
2.84

13.22
2.69

5.消化器

DIGE
C

胃の具合がわるい、痛む、もたれる、下痢、消化不良、など

13.22
3.23

13.65
3.33

12.37
3.27

11.62
2.86
6.直情径行性
=いらいら短気
IMPU
(H)
いらいらする、カッとなる、考えずに行動する、不平不満が多い、など 短気・直情径行性

17.97
3.45

17.88
3.66

17.74
4.07

16.87
3.93

7.虚構性K・S
 =社会的望ましさ

LISC
(L)

10

自分を良く見せたい傾向、自分をいつわって虚栄をはる傾向、そのためにうそをいってしまう傾向

19.03
2.85

17.76
2.86

19.94
3.06

19.50
3.08

8.情緒不安定
  ・対人過敏

MENT
(J)

14

ちょっとしたことが気になる、人前で仕事ができない、くよくよ、赤面、気疲れ、冷汗、落着きがない、気分に波、など

22.15
4.74

25.51
5.00

21.06
5.05

22.73
5.27

9.抑うつ性$
 =抑うつ度

DEPR
(K)

10

悲しく、孤独で、おもしろくなく、ゆううつで、元気なく、自信がない、など

14.14
3.41

16.04
3.76

13.82
3.66

13.89
3.59

10.攻撃性
=積極性

AGGR
F

7

体が強く、気は大きく、肥っていて、たちくらみ・寒がりでない、などの心理的外向・積極的・攻撃的

15.76
2.18

13.81
1.96

15.33
2.28

14.46
2.11

11.神経質

NERV
E

8

神経質、心配性、苦労性、敏感、気むずかしい、など

17.58
3.51

17.17
3.37

16.96
3.72

17.16
3.56

12.生活不規則性

LIFE
(G)

11

夜ふかしの朝寝坊、食事は不規則で朝食抜き、食欲不振、体がだるい、朝起きるのがつらい、など都心型の生活

18.83
3.58

19.82
3.32

16.43
3.48

17.13
3.35

13.体のストレス度
=心身症#

PSD#

判別値♯

値が大きいほど、心身症=体のストレスの程度が大きいことを示す

1.74
1.43

0.71
1.47

‐1.42
1.52

‐0.97
1.52

14.心のストレス度
=神経症#

NEUR#

判別値♯

値が大きいほど、神経症=心のストレスの程度が大きいことを示す

‐1.89
1.52

‐1.21
1.61

‐1.87
1.58

‐1.60
1.62

15.統合失調症#

TS#

判別値♯

値が大きいほど、思考の多様性、分散性が大きいこと、極端に大きい場合は統合失調症の確率大

‐‐
‐‐

‐‐
‐‐

‐0.63
1.93

‐0.53
1.96

16.総合尺度@

T1

主成分分析β係数

値が大きいほど、心身の自覚症状・訴えが多く重いことを意味する。死亡リスクも大。小さい場合は逆。

‐0.046
1.037

0.044
0.961

17.総合尺度@

T2

主成分分析β係数

値が大きいほど体の問題が大きい(心の方は問題ない)こと。
値が小さいほど心の悩みが深い(体の問題はない)ことを示す。

0.085
1.011

‐0.081
0.983


表1の注

*1975年都心の商社員集団. 年齢20-60歳. 男3,275人,女2,662人. 女は20歳代が82%と多い集団である.

**1993年群馬県の1市1村住民40-69歳人口. 男5,197人, 女5,539人のデータ. ただし、3選択肢の欠損値1-5問ある人については各問の欠損値を2で補完して計算した.

$ 抑うつ性尺度・抑うつ度THI-D.THI-Dの尺度得点は10-30点に分布する. アルファ信頼性係数による内的整合性は十分高い. これを用いてうつ病の判別診断ができる. 大学病院のうつ病患者のうちFSM-III−Rの分類で臨床的に中等度ないし重度抑うつ状態にある男女各10と23人(B群)と、寛解期軽度うつ状態にある通院患者ほぼ同数(A群)とを判別分析した. A群の平均得点は男女各14.2と16.6、B群男女各25.3と26.0と大きかった. 両群を判別するカットオフ点22点が得られ、敏感度0.91、特異度0.84、であった.(川田ほか:産業医学1992;34:576-77).勤労者の篩い分けには取り込み過ぎを避けるため28点以上(100人に2人程度)とするのが良い.(群馬産業保健推進センター:職域メンタルヘルスマニュアル2009)
 抑うつ尺度得点の大きい上位20%死亡リスクは,得点の中間の20%群を1.0とした時男女とも1.6と高かった.

♯この3つの尺度は得点ではなく判別分析の判別値でそれぞれの疾病傾向を測定する.それぞれ心身症 PSD、Psychosomatics、神経症 NEUR、Neurotics、統合失調症 TSの判別値である. 大学病院の外来通院中の心身症患者、神経症患者、統合失調症患者群それぞれ50、52、37人と各群の構成員(患者)とマッチさせた正常者とのTHI結果に、判別関数を適用して患者群と正常者群を判別させた値, 判別値=DF値=Discriminant Function Valueである.判別値が正で大きいほど、その疾病である確率が大きいこと、これが小さいほど、各逆の傾向のあることを意味する.3疾患のそれぞれの判別診断が可能である.敏感度はそれぞれ0.760,0.827,0.811,特異度それぞれ0.760,0.769,0.838であった.
 
@ 新しく開発された総合尺度T1とT2である. 新基準集団のTHIの結果の12尺度の得点を主成分分析して寄与率46%の第1主成分を得られた. これを総合尺度T1とした. T1が大きいほど心身の自覚症状・訴えが多く重いこと(すなわち身体表現性障害Somatoform Disorder が重いこと)を意味し、T!が大きいほど表2のように1.66と死亡リスクが有意に大きかった. T2はこの数値が小さいほど心の悩みが深く(体の問題はない)、T2はその値が大きいほど体の問題が大きい(心の方は問題ない)ことを示すことが解明された. 総合尺度T1とT2に関するこれらのことは事例からも証明された.


表2  コックスの比例ハザードモデル回帰結果による尺度・傾向値と観察集団の5分位群(20%ずつ5等分)
のβ係数と最大死亡リスク比:群馬こもいせ疫学コーホート集団約1万人7年の追跡データから

一・二次尺度
20%づつの5分位群の主成分分析のβ係数
死亡リスク比
第1
第2
第3
第4
第5
p#
最大リスク比
95%C1信頼区間
1.多愁訴

0.044

0-min
0.214
0.239
0.506

**

1.66
1.22
2.25

2.呼吸器

0.023

0-min
0.264
0.343
0.420

**

1.52
1.16
2.00

3.目と皮膚

0-min

0.094
0.078
0.278
0.197

ns

1.32
0.96
1.82
4.口と肛門

0-min

0.122
0.193
0.184
0.302

*

1.35
1.02
1.79

5.消化器

0.067

0.082
0.260
0-min
0.159

ns

1.30
0.95
2.25
6.直情径行

0.094

0.090
0.176
0-min
0.244

ns

1.28
0.95
1.71
7.虚構性

0.269

0.082
0.186
0.239
0.259

ns

1.31
0.95
1.79

8.情緒不安定

0-min

0.009
0.106
0.061
0.180

**

1.20
0.89
1.61

9.抑うつ

0.004

0.050
0-min
0.289
0.496

**

1.64
1.26
2.14

10.攻撃性

0.947

0.328
0-min
0.122
0.207

**

2.58
1.88
3.52

11.神経質

0.159

0-min
0.261
0.187
0.292

ns

1.34
0.99
1.81

12.生活不規則

0.043

0-min
0.187
0.023
0.445

**

1.56
1.20
2.03

13.心身症

0.114

0.071
0-min
0.350
0.564

**

1.76
1.32
2.34

14.神経症

0.075

0.149
0-min
0.289
0.517

**

1.68
1.25
2.24
15.統合失調症

0-min

0.285
0.214
0.102
0.305

*

1.36
1.01
1.81
16.総合尺度T1

0-min

0.147
0.195
0.279
0.507

**

1.66
1.25
2.20
17.総合尺度T2

0.108

0.062
0.220
0-min
0.396

**

1.49
1.12
1.97

表2の注

多くの尺度・傾向値で得点が最高の5分位群(トップ20%、80-100%)は死亡リスクが有意に高いことが言えた.

虚構性尺度(社会的望ましさの尺度)はU字型「物ごとはどうでもいい」←→「倫理的にこうすべき」の中間よりやや右寄りの第4の5分位群が死亡率が最低)が良く、攻撃性尺度は逆に得点が最低の第1の5分位群の死亡リスクが最大(即ち、自身がなく自罰的な群が最大)であった。

色つき: 最大死亡リスク比が統計的に有意(p<0.05)であることを示す。その他は有意(-).
0-min: β係数が最低値の5分位群(主成分分析による)
色及び下線つき: βが最高値の5分位群を示す(主成分分析による)

*最大リスク比: 最低の5分位群と最低の5分位群との死亡リスク比(例:多愁訴では第5/2のリスクの比)
イタリック体は6年間の累積死亡率の比例性が不十分なので最大死亡リスク比が保留されるもの.

p#: 最大死亡リスク比 MHR, Maximum Hazard Ratio の有意性を示す. 性別は調整変数に入れた.
*: p<0,05; **: p<0.01で有意を; ns: not significant 統計的に有意でないことを示す.