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掲載されている判定結果サンプルの名前は仮称です。また、掲載に当たり、事前にご本人様の了承を得ています。

事例:抑うつの事例
有能なIT商社マンがふとしたことでうつ病になった。社内外と専門医療の連携で、この事例はともかく2.5ヵ月で不完全ながら職場復帰をすることができた。事態が表面化した時点と職場復帰した時点のTHIの結果を比較する。

1. 事例: 産業保健推進センターの相談窓口に産業医から紹介された53歳男子従業員、いくつかの支店と持つGシステム情報会社支店長。既婚、娘2人。体格大きく、血圧150/100。

2. 会社での発病経過: 本人と上司の重役との話しから、次のような経緯で発病が表面化し、対処されるに至った。
本人は猛烈社員で、一支店を立ち上げることに成功しそこで支店長として9年間働いた。3年ほど前から業績が思うように上がらず、多少あせっていた。2年前に他の支店に転勤し、部下15人の支店長であった。通勤時間1.5時間、時間外勤務1日3時間余、かなりの過重労働であった。

2年ほど前のこと、挨拶のスピーチでつかえてしまい、部下に助けられた出来事があった。この失敗は現在でもよく思い出す。これをきっかけにあまり元気がでない、以前のようにやれないことを自覚するようになった。軽い外傷後ストレス障害PTSDがあったものと思われる。

会社の中でも、本人の仕事での不調・問題点がささやかれるようになった。「職場での所内会議がちゃんとできない」「伝達すべきことを下に伝えないことが度重なった」「大きな声で叱れない」「命令を出してくれない」「お客からも商談が一向に進まないとクレームがくる」など、支店内での業務に支障が目立つようになった。

そこで、本社の部長が本人に会い、部長の失敗談などを交えて懇談すると、以外に素直に自分の問題点を認め、気が楽になったようであった。本人自から、ちゃんと直したいので専門家の外来を訪れあるいは休暇をとって入院して直したいとまで言った。

3. 保健医療機関と紹介: 本人は、実は2年前から近くの診療所に通って、うつ病と診断され、投薬を受けていた。症状に応じてときどき薬を変更された。一時的に状態は改善するが、再びもとのようになることを繰り返した。

4. 事例の発病時THI(図の●印): 本人の希望もあり、専門病院を紹介することになった。その前に、質問紙健康チェック票THIを記入してもらった。その結果は図の●のようであった。 図のように、「抑うつ度」と「こころのストレス度」の尺度得点(%タイル)が高い結果であった。「抑うつ度」は19点で91%タイル、7段階評価の「6」であった。成人男性100人中「抑うつ度」の尺度得点の小さいほうから数えて91番目、すなわち大きい方から数えて9番目という結果であった。「こころのストレス度」も同様91%タイルの「かなり強い」であった。

身体症状の尺度は「ふつう」ないし「少ない方」とういう特徴があった。これで見ると、いわゆる神経症の領域(心因性)のうつ状態と判断された。面談では、顔色、表情も悪くなく、ともかくひどい「うつ」ではないと複数の専門家によって判断されたことと合致していた。

5.事例の通院治療と職場復帰時のTHI(図の△印): 本事例は、紹介した精神病院の専門医の診断で「典型的うつ病ではない、入院の必要はない、服薬して1−2週に1度通院して、様子をみましょう」とのことであった。運動をする時間ができたので奥さんのすすめでジョッギングを始めた。1.5ヶ月ほどで大分よくなり、1ヶ月後に軽い業務に復職でしてもいいと言われた。会社の幹部と3者で相談し、70%くらいの昔の地域でする単独の営業の仕事に就くことになった。復帰後1.5ヶ月時点で実施したTHIの結果は右図のようであった。

全体に病初より「はい」応答が減少し「いいえ」が増えた結果、チャートは縮小している。「抑うつ度」は91→32%タイルに大幅に減少、「こころのストレス度」も34%に減少した。「積極性」のみは54→84%タイルと増加した。

 いずれにしても、自らの中に、自信、やる気が満ちてきて、愁訴を表現することに抵抗する態度を明確になっている。故意に応答するとしても、敢然と「いいえ」と応える感情の動きが手ごたえとして存在し始めたと言えよう。図表末の「社会的望ましさ」の尺度が8→51%に上昇したことがこれを裏付けている。
 以上のように、THIは集団に適用して疫学調査で使えるのみならず、個人の状態と経過を追うのにも有効であることが示された。